生命科学コミュニケーション

昨日は生命研の学生フェスティバル。ふらっと聞きに行ってきました。お目当てはK藤研S井氏の発表。メディアで生命科学のことが頻繁に取り上げられるようになってきた今日この頃、個人的には”研究者、一般人、産業、政府間のコミュニケーション”はより重要になってきていると感じる。

発表はゲノムひろばについてだったが、一般人との交流を目的としたこのイベントは、かなり大きな効果を上げているらしい。来てくれた一般の方々からも”よくわかった”というような回答も頂いているし、加えて研究者サイドにとっても自分の研究を再認識する機会になっているらしい。もちろん問題はいくつも抱えているが、この企画を真似たことをやってみようとしている研究機関があったり、S井氏自身も”次から次へと仕事が降ってくる”とボヤくほど。BSE問題とか遺伝子組み換え食品とか、遺伝子治療とかゲノム解読とかとか。そういえばオレが修士か博士の学生の頃、当時のボスは”クローン羊 ドリー”の記事を持って一般教養の講義に行ってたな。生命科学に対する関心が高まってきている今日、やはりこういった”研究者と一般人”のコミュニケーションは広く求められているのだろう。

shojiさんのブログを見てしばらくぶりに柳田先生のブログを読んでみたのだが・・・JSTと今後の日本の科学はどうなるのか、と思ってしまう内容でしたな。確かにJST文科省とは違ったスタンスで研究費を提供する機関ではあるのだろうが、上に立つ人間の中に”社会に還元できない基礎研究は意味が無い”というような考えを持っている人がいるのはいかがなものかと。ある程度ゴールを考えた上で研究は進めなければならないが、明確なゴールを決めにくい、あるいは何が起こるかわからないのが基礎研究なのだ。世界的に長い科学の歴史を支えてきているのは基礎研究であるわけで、その上に産業や利便性の高い生活が成り立っているのは言うまでもないと思うのだが。つまるところ、”今日明日のうちに社会への還元の明確な姿は想像しにくい”のが基礎研究なのだ。そのくらいは理解しておいて欲しいものだが・・・まぁ、我々基礎研究に携わる側からの外へ向けた情報の発信の仕方が悪いと言えばそれまでで。一般の方のみならず、研究費を提供してくれる政府やこういった助成機関にも我々の研究に関する説明の義務があるだろうし、理解してもらうためには専門用語を並び立てるのではなく、それ相応の説明の方法を考えなければならないのだろう。そもそも研究を支えているのは、主として税金なのだから。

実家に帰ると、時々”どんな研究しとるん?”と聞かれる。1から10まで説明するのは骨が折れるしリアルに恐ろしく時間がかかるだろうし、かといってかいつまんで説明するのも両親がどこまで理科で習った生物を覚えているかがわからないからなかなか難しい。いくらか説明するのだが、いつも”ふぅ〜ん”て感じで、わかったのかわからないのかがこっちにもよくわからない。まぁ、親としては”たぶん聞いてもよくわからないだろうけど、何をしてるかは気になる”から聞いてくるのだとは思うが。とりあえずおおまかなところから知ってもらおうと思い、今年発刊になった”植物まるかじり叢書〜植物が地球を変えた!”を2冊買って、1冊は自分用、もう1冊を実家に送った。盆に帰った時に聞いてみたら”ちょっとづつ読んどる”らしい。両親との間にある生命科学のハードルが少しでも下がれば、と思う。ちなみに↑の本はAmazonでも買えます(笑)


ゲノムひろば。来週です。うちの研究室から今年も展示を出します。”手伝う”予定だったのが、ボスから完全に丸投げされたので、とりあえず宣伝(笑)

http://hiroba.genome-sci.jp/2007/01.html

興味のある方はぜひ。といっても、これ読んでるのほとんど身内やな(^^;)